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2011年8月 1日 (月)

NHKスペシャル新シリーズ「未解決事件」 開幕

NHKスペシャル「未解決事件」を見る。

こういってはなんだが、当日の新聞、ラテ欄をみて、このタイトルが我が目に飛び込んできた。有無を言わさぬものがあった。事前にまったく、この番組について予備知識はなかった。
傑作の予感・・・そして、予感は外れなかった・・・!

面白い。実に面白い。
さすがNHKといわしめる見ごたえ。
30日の放送を見終えて、まるで運動をしたかのような疲労感さえあった。
31日の分は、途中で体がついていかず、録画してあるのをいいことに、数時間、休まねばならなかったほどだ!
見るのに体力の要る番組など久しぶりだ・・・。

この見ごたえは、まれに見るボリュームにあるだろう。
基本、NHKスペシャルは、一時間以内。シリーズものなら全5回とか全12回とか、それを連続して全体を形成していくわけだけど、この「未解決事件」シリーズは、その従来のNスペの枠組みをとっぱらっている。二日に渡る3部構成、トータルで4時間近く。これだけでちょっとしたミニシリーズの趣がある。それでじっくり見せるのだから・・・体力のない中年がみるだけで疲弊するはずであるw

ドキュメンタリー×ドラマというスタイルも面白い。これまでも歴史モノやら、再現ドラマはあったけど、今回のドラマ部分はそれとはケタが違う。上川達也だ・池内博之だ・大杉漣だ、出演者の顔ぶれは、映画か民放のスペシャルドラマ級である。てか上川と大杉ってところで、あたかもテレ朝「遺留捜査」みたいで・・・ww
ちなみに、再現ドラマに力をいれたドキュメンタリーは、NHKではこれが初という印象もあるが、BBCとかでは割とあるスタイル。CSのヒストリーチャンネルやディスカバリーチャンネルを見てるひとなら、珍しくないのではないだろうか。

今後も、シリーズは、この調子でいくのだろうか・・・いや、こりゃ完全に大河よりもNスペである。たとえ春日局を演じるのが誰であろうと、2011年後半、NHKの顔は「未解決事件」で決まりだw

そんなじっくり取り組む「未解決事件」シリーズが、file:01として取り上げるのは、あの「グリコ・森永事件」。当時、自分は高校生であったろうか。「キツネ目の男」の似顔絵など、いろいろ印象深かったと思っていたのに、番組全体を通して、案外と知らなかったことがあったのだと、驚かされた。

ドラマ部で知る、犯人×警察×新聞の三つ巴。
当時の警察関係者に聞く捜査の実情・・・
(よくぞ答えてくださいました!>関係者に感謝!)
(てか答えさせるNHKがさすがというべきか)
「キツネ目の男」についても、あのように現場で捜査陣が肉薄していたとは知らなかった。なにより彼への職務質問の実施を巡っての現場と指揮上層部とのやりとり・・・!「まんま『踊る大捜査線』やん!」と声をあげた視聴者も多かったのではないだろうか!(恐らく、「踊る・・・」シリーズの、キャリア・ノンキャリの問題提起や「事件は現場で起こってるんだ」は、こういった警察への取材を踏まえて出てきているのではないのかな~??そういうのを踏まえてドラマ作りしてると思うんだけど)あるいは「相棒」のファンなら更に詠嘆を深くしたのではなかろうか・・・(指揮してんのサッチョーかよ、みたいなw)

これが「鬼平」なら、密偵が尾行をして、必ずやキツネ目の男のヤサをつきとめたことだろう・・・ふと、そんなことを考えてしまった。いや、マジな話、鬼平の捜査手法も、現行犯確保・一網打尽のように思える。だが、その前段階として、必ず犯人一味の規模をつきとめることに鬼平の火盗改めは腐心している。そこが把握できねば、網の大きさなど決めようがないではないか。

だが、当時の警察は、犯人像についても誤差があったようで・・・犯人グループの脅迫テープを、現代科学で分析するくだりは、驚愕を通り越して、恐怖を覚えた。荒事実行犯やキツネ目の男など、成人男性5人に、脅迫文を読んだ男の子ひとりと、30~40代の女性ひとりと思われていたのに、男の子は二人、さらに、女性も10代半ばの少女であったことが判明。
これが私には、底知れぬ恐ろしさを感じさせたのである。
事件からおよそ30年。彼らはそれぞれ30代と40代であろうという。
今の今まで、「自分はあのテープを読んだんだよ」そんな話が漏れてこないという事実。ガッチリと秘密は守られているという事実。それをどう解釈したらいいのだろうか。
彼らは、犯人の子供たちなのか?それとも、読むためだけに利用され、事後「片付けられて」しまったのだろうか・・・?
もし前者だとすると、まさしく「鬼平」世界を彷彿とさせる闇の住人である・・・

音声テープを現代科学で分析するという手法はさすがだが、ほかの捜査手法は用いられることはないのだろうか。たとえば、新聞各社に送りつけられた百数十通に及ぶ脅迫状を通じてプロファイリングすることは不可能なのだろうか? 自分としては、ある文章のなかでダイナマイトのことを「マイト」と表現していたことに、とても引っかかりを覚えている。あの当時、そんな表現は一般的なものでも、流行していたものでもない。流行だとすると、日活全盛期の、小林旭をマイトガイといっていた頃まで遡るのではなかろうか?
そのほかにも「けいさつの あほどもへ」と書き出して、すぐ次の文章で「おまえら、あほか」と「あほ」をすぐに繰り返し使っていることなども、あまり文章を書きなれてる者の手によるとは思えない。ある程度文章を書きなれてる者なら、違う言い回しを用いようとするはずである。
いずれにしても、これほど饒舌な犯人は見たことがない。そして、「喋りすぎれば」ボロがでるはずなのだ、普通は・・・。しかし、彼らは捕まらなかった。

彼らが菓子に混入した毒物・青酸ソーダにしてもそうだ。どういった人物なら、それに最も手を出しやすいだろうか。それを用いるということは、それが身近にあるからだ。選択しやすい環境にあるからだ。それとも、青酸ソーダは、ありふれた、誰もが手に取りうる代物だったろうか? およそ30年前、青酸ソーダは、そんなにもありふれた身近な存在だっただろうか・・・この事件以後、わたしたちの生活から遠ざけられたのだったろうか・・・さすがに、そういうところにまで、記憶がない。

いずれにしても、一年ちょいの狂騒を経て、事件は終息した。次の大事件がおき、メディアの関心も次へと移った・・・必死の捜査は続いているはずだった。しかし、犯人は闇に消え、時効を迎えたのだ・・・・・・。

その次の大事件というのが日航機墜落事件というのをみて、「ああ、『クライマーズ・ハイ』に繋がるのね・・・」と思ってしまったりw
ところで、この日航機に、犯人のターゲットだった企業の社長が乗っていたという話があって、グリコ・森永事件との関連を指摘するむきもあるそうな。

未解決事件・・・とてつもない犯罪なのに、解決されず、そのままになっている謎・・・このシリーズでは、そういう事件がいろいろ登場するのだろう。
NHKのサイトをみると、取り上げるのは次のような事件だそうだ。

3億円事件(1968年・s43)
・朝日新聞阪神支局襲撃事件(1987年・s62)
・警察庁長官狙撃事件(1995年・H7)
・八王子スーパー強盗事件(〃)
・世田谷一家殺害事件(2000年・H12)
・島根女子大生殺害事件(2009年・H21)

さらに、一応解決しているが、謎、未解明な部分が多い事件として、次のものが加わる。

・ロッキード事件(1976年・s51)
・オウム真理教関連事件(1995年・H7)

こうしてみると、あることに気がつかないだろうか。いわゆる未解決事件が、昭和末期から平成に入って、格段に増えているということに・・・。
シリーズ開幕のグリコ森永事件も、その昭和末期事件群に入る。
一応は解決している「酒鬼薔薇事件」に「女子高生コンクリート詰め事件」。それらだって、この期間に入る(平成だけど)・・・・・・

今回のシリーズ第一弾の感想をつづるブログをいろいろと拝見しているのだが、この事件を昭和のものと位置づける人がいることに違和感をもつ。
昭和とひとくちにいっても、六十有余の長きに渡る。その期間は明治に次ぐ。
その長い期間の出来事を、ただ単に「昭和的」ということはできないだろう。
昭和という時代のなかでも、いくつかの区分がなされるべきであろう。

たとえば、昭和開幕まもない頃は、大正の自由な気風が横溢していたし、
その後の、いわゆる太平洋戦争の頃は、まったく異なる、ガッチガチの社会である。
1925・S20の8月で、その空気はかわり、
戦後の混乱も、「3丁目の夕日」でおなじみになった昭和30年代に入ると、復興が安定へとかわり、
昭和40年代ともなると、いわゆる高度経済成長期で、戦後の繁栄が始まり、
昭和50年代になると、「もはや戦後ではない」西側世界でも稀な物質的繁栄が当たり前のものとなりつつあり、
1980年代に入る頃、昭和も後数年というその頃は、その豊かさも空前のもの、ついには未体験ゾーンであるバブル前夜である・・・

物質的・経済的豊かさは、人の心を確実に変えた。親の世代と子供の世代で価値観はガラリと変わったし(であるからこそ、上述した犯人グループの子供たちが、仮にその子として、親のいうことを守っているとしたら、驚きなのだ)、価値観の変化は、犯罪の質的変化にも結びついていく・・・

仮に経済的繁栄と、それに付随する人の価値観の変質が、犯罪の変化であり、それに対して捜査する側が変化に追いついていないとしよう。なるほど、未曽有の経済成長を受けて3億円事件がおこるのも無理はない。だが、それならば、もっと、この時代に未解決事件があっても不思議ではない。後の、昭和末期以降、現在にいたるまでの、未解決事件の頻発度は一体なんなのだろう。

(いや、3億円事件の頃も、未解決事件は実は多かったのかもしれない。強引に解決して、冤罪という別の問題を生んでいる、のかもしれない)

付け加えるならば、事件だけではないのだ。この期間に頻発したコトは。地震、毎年のように規模が拡大する台風被害etc.etc.、災害も目白押しだ。
天変地異だらけの時代、それが平成だ。

平安末期から鎌倉時代にかけて、日本は、稀に見る動乱の時代であった。
武士という、荒事をなす階級が誕生し、社会の主導権を握った時期であり、動乱となっても仕方がないのかもしれないが、実は、平安末期から、ほんとうに乱れていた。それを、仏教の教えに絡め、「末法の世」と呼んでいたが、

もしかすると、昭和末期から、平成という時代、20世紀末から21世紀の初頭にかけての日本は、「第二の末法の世」ともいうべきなのかもしれないなぁと思ったりする。

そして、シリーズ「未解決事件」とは、戦争とかそういう事例ではなく、事件によって、日本の現代史を俯瞰する、稀に見る歴史回廊になりそうな予感がある。

ことによると、わたし達は、このシリーズを直視できなくなるかもしれない。改めて、自分たちが、なんと恐ろしい時代に生まれてしまったのかを、つきつけられて・・・

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