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2013年3月 9日 (土)

アルバム「ゴースト・イン・ザ・マシーン」

恐らくポリスのアルバムで個人的に一番聞き込んでいるのは4枚目「ゴースト・イン・ザ・マシーン」だ。

ポリスを知ったのは、シングル「孤独のメッセージ」からだけど、当時はお金に苦慮する中学生でホイホイLPなんぞ買えなかったし、よしんば買ったとしても、家にはソノシートを聴くのがせいぜいのショボいレコードプレイヤーしかなかったから聴けなかったろう・・・。

そうこうしているうちに、ポリスは3枚目の「ゼニヤッタ・モンダッタ」を出していた。
勿論、自分にはフルアルバムを聞くことはできない。シングルの「高校教師」は楽しくラジオで聴いていた。「ドゥドゥドゥ・デ・ダダダ」の日本語版という珍妙なものには首をかしげた。当時すでに、テレビ神奈川(TVK)などで展開する関東ローカル局の洋楽PV専門番組を見ていたから、そこでもPVを見ていた。「高校教師」の場合、お茶目だなと思ったし(その意味では、やはりPVまでもが3枚目とテイストが似てる)、「ドゥドゥドゥ・・・」は雪の中でよくやるな、などと思ったものだ。あんななかでギターを爪弾くなんて、アンディ、よくできるなあと思っていた。

が、我が家に音楽的黒船がやってきた。ラジカセを入手したのだ。
さて、これは、買ったのだったか、それとも父が知人から貰ってきたのだったか・・・今となってはよく覚えていないのだが、とにかくラジカセを入手して、ようやくFMラジオも自由に聴けるようになった(いや、それまで使っていたのは短波とAMだけのものだったので・・・洋楽もFENでわけもわからず聴いていたのである)。そして、録音! 今の若い人はご存じないだろうが、エアチェックと称して、ラジオから自分の好みの番組なり音楽を録音するのである。テープを備え、ポーズボタンを押しつつ、自分の聞きたい曲がかかる瞬間を息をつめて待つ。いかにタイミングをはずさず録音するかに自分の全人生を賭けていたような・・・大げさな話だが(^^;

そして、よくしたもので、当時のFM番組には、リスナーのエアチェックの便宜をはかってくれるような特集があったのである。「●●の新譜今夜解禁!全曲!」なんてものが。ラジカセを手に入れ、カセットテープの扱いに慣れたところに、タイミングよくポリスの4枚目がリリースされた。かくして、私はようやくにして、ポリスのアルバムをフルで通して聴くことが叶ったのである。

ポリスの、それまでのアルバムを聴いてこなかった分、そして人生で初めて、贔屓のアーティストの楽曲を、アルバムという作品単位で手に入れ、私は有頂天だった。いってみれば、好きなケーキを、カットではなく、ホールでまるごと手に入れたようなものだ。まぁ、厭かず聞き込んだね。5枚目が出るまでは。なんといっても、テープだから扱いが楽だったし。CDなんてものが出るまでは、やはりLPというのは、音楽愛好家のためのアイテムで、中学生なんぞに気軽に扱えるものではなかったのだ。

そして、この4枚目がまるまるアルバム単位で聞き込むのに適していたというのも、事実であった。

後年、アルバイトでまとまった金銭を得て、私は念願のポリスのアルバムを全て購入することができた。そして、オーディオが趣味である友人に頼んでテープにダビングしてもらって(これをテープに落とし込む、というが、今の若い人にも通じるのだろうか)、過去の1枚目から3枚目までをそれぞれフルで聴くことができた。5枚目「シンクロニシティー」登場以前のことであるが、

なんとはなしに、1枚目から3枚目までは、「アルバム製作だー!締め切りまでに録音するぞー!曲そろえたぞー!演るぞー!よし録ったぞー!イエー!」てな感じがする。しかし、4枚目にいたって、初めてアルバム一枚でストーリーがある、そんな印象を抱いたのである。そう、例えるなら、ちょっと前に一世を風靡したプログレッシブロックみたいな。

ただ、ポリスの4枚目を捕まえてプログレみたい、という評判はあまり聴かないので、恐らく、音楽シロートの私の青臭い印象にすぎないんだろう。それに、シングルカットされた「マジック」"Every Little Thing She Does Is Magic"の持つ雰囲気があまりに明るくて、それもプログレ的という印象を払拭しているのかもしれない。
(それとこの曲は、実はポリスとしてはごく初期からの作品だったそうで、なんでそれまでアルバムに収録されなかったのか。ああ、パンクに恋愛ソングはご法度だったからか)

でも、あえて言わせて貰うと、4枚目全体からすると、この."Every Little Thing She Does Is Magic"こそが浮いているのだ。そうなじゃないか?この能天気な、南国のビーチを思わせる、恋愛に舞い上がった感じ。後年の問題恋愛ソング「見つめていたい」の美しくも悲壮な雰囲気とエラい違いである。ここだけ、3枚目の雰囲気が残っているような気がする。だが、これを除いた他10曲は押しなべて重い・暗い・楽しくない! 

楽しくないというと、それぞれの楽曲が良くないといってるように聞こえるだろうが、そうではない、すべての芸術が、人間の喜怒哀楽の4局面のいずれかに属するとすれば、例えば3枚目の「ドゥドゥドゥ・・・」などは喜であり楽だと思う。しかし、この4枚目においては、「マジック」以外に喜や楽を感じることがない。スティングの作る楽曲には、いずれも、そこはかとなく哀が漂っているが、それにしても、4枚目には、怒や哀、いや、それよりも悲とか苦とか、重とか、悩とか・・・そんなイメージなのである。

収録されている曲だって、"Invisible Sun"(3曲目「見えない太陽」)だの、"Darkness"(11曲目「暗闇」)だの・・・ああ、タイトルだけでも、なんて暗いっwww

歌詞の内容にしても、単純な恋愛ソングなど、やはり「マジック」だけ。全体的に、文明批判めいたものになっていて・・・というと、「コイツはよっぽど「マジック」が嫌いなのなんだな」とか思われそうだけど、全体のコンゼプトからしたら、浮いてるってことをいいたいだけで、「マジック」も大好きだよ、大好きだとも。

ポリスのアルバムは、どれでも1曲目が極めてパンチが効いてて、聴いてて「掴みはオッケー!」てなるんだけど、恐らく作ってる当人たちもそのつもりだったんだろうと思う。そのでんでいくと、この4枚目の1曲目"Spirits in the material world"にこそアルバム全体のコンセプトがある。

4枚目の1曲目のタイトル"Spirits in the material world"(物質的世界の中の精神)とは、この4枚目のアルバムタイトル"Ghost in the Machine”を噛み砕いたものだと個人的に思っている。

ここでいうGhostとは、いわゆる幽霊のゴーストではなく、ドイツ語でいうガイスト、すなわち精神の英語訳だ。本来の意味は「機械の中の精神」。まぁ、自己流の解釈だが、当時の自分は、機械的なものに囲まれた、物質的世界で、人間性とはどうあるべきかということかな、と漠然とイメージした。(アーサー・ケストラーの著書にはいまだあたっていない・恥)。1曲目に4枚目のコンセプトが込められていると考える所以である。また、こういうコンセプトがあればこそ"Rehumanize yourself"なんてタイトルの曲も作られたのだと思う。

そのせいか、この4枚目は、SF映画か何かのような気がしてならなかった。
ディストピアな、ダークな未来。機械にやりこめられ、人間性が危機に瀕しているような、そんな未来を舞台に描く音楽劇・・・ジョージ・オーウェルの「1984」なんかとも似ていると思ったし。だから余計に、この4枚目が遅れてきたプログレッシブ・ロックに思えてならなかったのだろう。

機械と人間。それは、アルバムジャケットのイラストにもいえること。当時の流行の電卓で表現したポリス3人の顔。もし、プログレの定義を単なるコンセプト・ロックとまで引き下げてもらえるなら、この4枚目は、充分プログレの名に値するのではないかと、やはり今でも思う。

スタジオにこもって、当時の技術の粋をつぎ込んだという、多層的な録音。それもまた、プログレ的だと思ったし。とにかく作りこまれた精緻なアルバム・・・聴けば聴くほど、そういう印象を強くした。

ジャンルの違う話だが、後年、あの「攻殻機動隊」という話に出会ったとき、それは押井監督の「ゴースト・イン・ザ・シェル」だったわけだけど、真っ先に連想したのが、このポリスの4枚目「ゴースト・イン・ザ・マシーン」であった。

両者をSFとして比較するなんてことは、ムチャクチャな話だと思うが、やはりポリスの4枚目と比較して、「攻殻」って凄いなと思ったものだ。ポリスの(というかスティングの?)考えることは、機械に囲まれても"Rehumanize yourself"だったわけだけど、「攻殻」のほうが、機械の中に取り込まれた先に展開してるんだもんね。そして、取り込まれちゃってもいいんじゃない?と世界に思わせえちゃったよね・・・

4枚目でとにかく好きなのは、1曲目"Spirits in the material world"。そして、後年のスティングのソロワークを思わせる美しい"Invisible Sun"や、「ムー」の世界ですか?と訊きたくなる"Secret journey" 。勿論、楽曲単独でなら"Every Little Thing She Does Is Magic"も大好きだ。・・・なんのこたない、全部シングルカットされた曲だ(^^;

それら以外の曲は、実はあまり好みではなかった。4枚目から積極的に取り込まれたホーンセクションは、ちと騒々しいなと思えたし・・・だが、今になってみると、これら苦手と思っていた楽曲には、3枚目までの、パワフルなライブ感が健在であると思えるようになった。そして、後期ポリスでいよいよ増していくスティングのスター性の前に影が薄い、なんて思っていたアンディとスチュワートを強く感じるのである。アンディのギターの力強さ、そしてエッヂの効いたスチュのドラム、それを楽しむために、今はあえてお気に入りでなかった曲たちを好んで聴くようになっている。

・・・変な話だが、そういう曲では、スティングの声いらねwと思うことがある。
例えば、4枚目のアルバムバージョンの"One world (Not three)"、これをドラムとギターだけにして聴けないものかと思ってしまう。スカスカかなあ?? でも、このスチュのドラムパートは好きなんだなあ・・・それとアンディのギターで充分成立するんじゃないかと思ってしまう。う~ん、せめてインストで聴いてみたいものだ。

疲れた夜になど、あ~wホーンセクションうるせえ!などと思ってしまう。
このアイディアはどこから来たものなのだろうか。ヒュー・パジャムではなく、サックスを吹けるようになったスティングが導入したものじゃないかと思っているんだけど、これは高いおのれの声に足りない低音の迫力を補うためだったのではと邪推している。

スチュのドラムとアンディのギターに張り合うため。スチュとアンディは、それぞれの楽器を弾きこなして、音域というか、音色が多岐に及ぶ。が、スティングの声は高音域だけだから。そして、もう一つの重大な動機は、なによりアンディのギターをかき消すためだったのではないだろうか。この頃、誰よりもポリスらしいメロディを作ると実は評判だったアンディへの対抗心から。・・・確かにベースとなるメロディはスティング作だったろうが、ポリスの楽曲として仕上げるに際しては、実はアンディが一番貢献してる。ドラムとベースの間を彼一人で埋めているといって過言ではないのだから。

変幻自在なアンディのギターと、スティングのヴォーカルが調和している"Secret journey"。スチュのドラムは素直に二人を引き立ててるように思うのは私の希望的観測か。そのあとは"Darkness"。ちょっとユーモラスな印象もある、秘密の旅路を終えたあと、くったくたに疲れました~wみたいな。そして、ポリス3人のエゴがぶつかり合うという壮絶なスタジオ作業を終えての、スチュの感想だったのかもしれない(これは詞曲ともスチュの作品)。

もし、4枚目の「ゴースト・イン・ザ・マシーン」を一編の物語として捉えるのなら、やはり、それは悲劇であろうか。なんたって、オチは《暗闇》なんだから。しかし、単なる悲劇ではなく、荘重で、骨太の物語だ。

ポリスは一度闇に落ちる(まぁ、実際は世界ツアーのあとしばらく休んでただけだけど)。それまで1年に一枚のペースで作ってたアルバムは2年待たされ、その5枚目のアルバムはポリス最後の、永遠の一枚になるのであった。

ポリスといえばその5枚目が代表作と誰もが信じて、いまや4枚目など誰からも省みられなくなっているのかもしれない。実際、私自身、5枚目が出た直後、そればかり聞いていたような気がする。でも、いつの頃からか、4枚目に戻るのだ。無性に"Spirits in the material world"が聴きたくなる。

多分、私自身、まさしく物質世界のチンケなものに過ぎぬ私自身の魂(ゴースト)を、魂振りさせ、力づけるために。

まぁ、洗練度では5枚目に及ばず、無骨さが目立つ4枚目ではあるが、やはりポリスの作品として、確固たる存在感を放っていると思うのである。

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